Basler Rezepte – Baslerの処方箋

     東フランク方言で記された恐らくドイツ語最古の処方箋です。若干、古ザクセン語的な側面も含んでおり、9世紀にフルダで記されたものとされています。
     初めは熱に対しての処方箋であり、まずラテン語で記された後にドイツ語でその内容と補足が書かれています。
     2番目の処方箋(写本の下部)では癌性潰瘍に対しての処方箋が記されています。
     研究者によっては前半の熱に対しての処方箋を2つに分けていることもあります。


    Abb.: Basel, Universitätsbibl., Cod. F III 15a. 17r.


    1.
     没薬、サビナ、赤い乳香、胡椒、白い乳香、ニガヨモギ、(白い)ニガハッカ、硫黄、ウイキョウ、オオバコ、ヤマアイ、ワイン二瓶、これらを別々にすり潰した後に一緒に混ぜ合わせ、そして三夜醗酵させよ。熱が出るようであれば朝に一杯それを飲ませる事。それから夜に寝る前に一杯を飲ませるように。四十日間はその日に作られたパンやワインを摂取せぬように気をつける事。また日中に汲んだ水/日中に求める水を飲まぬように、そして体を洗ったり入浴もせぬように。コリアンダーやその日に取れた卵を食べぬように。
    彼の看病をする者は、彼を昼も夜も一人にせず、また一人で寝かすこともないように。何も行わせぬよう、気を配るべし。
    足りる場合には一瓶で済ます事。しかしその一瓶が飲まれた後にまだ熱が続くようであればもう一瓶を用意するように。
    2.
     癌性潰瘍に対して
    塩と石鹸と牡蠣の殻の軟部を焼くべし。そしてそれら全てを一緒に混ぜよ。また予め古い包帯を洗っておくように。
    血が出るまで常に擦りつけよ。もし潰瘍が酷くなっても、また全くそうならなくても、頻繁にあてがい、押し付けておくように。
    そして湿ったままにせず、脂で汚さないようにして、傷を触らぬ事。
    そうして清潔となれば、卵の白身と清い蜂蜜を一緒にまぜ、それを用いて傷を治すように。


    底本:Stephan(2007, S.278f.)
    1.
    murra, seuina, uuiroh daz rota, peffur, uuiroh daz uueihha, uueramote, antar, suebal, fenuhal, pipoz,
    没薬、サビナ、赤い乳香、胡椒、白い乳香、ニガヨモギ、(白い)ニガハッカ、硫黄、ウイキョウ、
    uuegabreita, uuegarih, heimuurz, zua flasgun uuines, deo uurzi ana zi ribanne, eogiuuelihha suntringun.
    大オオバコ、オオバコ、ヤマアイ、二瓶のワイン、これらの薬草を各々別個にすり潰し、
    enti danne geoze zisamane enti laze drio naht gigesen enti danne trincen, stauf einan in morgan,
    そして一緒に混ぜ合わせ、三夜醗酵させて、それから一杯を飲ませよ、朝に一杯、
    danne in iz fahe, andran in naht, danne he en petti gange.
    それが彼を捉えるなら(熱が出るようであれば)、そして夜に一杯を、彼が寝る時に(飲ませよ)。
    feorzuc nahto uuarte he e tages getanes, daz he ni protes ni lides ni neouuihtes, des e tages gitan si,
    四十夜間、彼は早朝/日中の行いに気を配るべし、彼がパンもワインも摂取せぬように、日の早い時間(/日中)に作られたそれらを、
    ni des uuazares nenpize, des man des tages gisohe, ni in demo niduuahe ni in demo nipado,
    水を飲まぬように、その日(中/昼)に求める水を/汲んだ水を、体を洗わぬように、入浴せぬように、
    ni cullantres niinpiize ni des eies, des in demo tage gilegit si,
    コリアンダーを食べぬように、その日に取れた卵を食べぬように。
    ni eino ni si, ni in tag ni in naht, eino ni slaffe, ni neouuiht ni uuirce nipuz de gisehe, de imo daz tranc gebe enti simplum piuuartan habe.
    一人にするべからず、日中も夜も、一人で寝かせるべからず、何も行わせぬように、気を配るように、彼へ飲み物を与えそして常にそばにいる(者は)。
    erist do man es eina flasgun, unzin dera giuuere:
    はじめに、足りる限りは一瓶で行うこと、
    ibu iz noh danne fahe, danne diu nah gitruncan si, danne gigare man de antra flasgun folla.
    もしそれが飲まれた後にまだ熱が続くようであれば、別の一瓶を用意して(薬で)満たすように。
    2.
    uuidhar cancur braenni salz endi saiffun endi rhoz aostrscala.
    癌性潰瘍に対して、塩と石鹸と牡蠣の殻のすすを焼くべし。
    al zesamene gemisce. mid aldu uuaiffu aer thu hrene.
    全てを一緒に混ぜよ、予め古い包帯を洗っておくように。
    rip ana daz simple, unz dez iz blode; filu oft ana legi,
    それを常に擦り付けるように、血が出るまで; 頻繁にそれをあてがい
    simble thui ana, od de itzs arinne vel od thet al aba arinne.
    常に押し付けておくように、もしそれが酷く生じても、また全く生じなくても。
    ende ne laz iz naezen, besmeruen, hrinan daemo dolge.
    そして湿ったままにせず、脂で汚さぬようにして、傷を触らないように。
    thanne iz al ob siae rhaeno do ze samone aegero dez uuizsae aende hounog
    そうして全く綺麗に見たならば、卵の白身と清潔な蜂蜜を一緒にして、
    rhene lachina mid diu daez dolg.
    その傷を治すように。

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